ネキリムシ。根切り虫。(蛾の幼虫です)
畑で遊ばせてもらっているので、この芋虫たちに会う機会も増えます。農家の皆さんからすると「憎い奴ら」ではないでしょうか。(もちろん、これはある見方からの勝手な考え。別の見方をすれば悪い奴でもなんでもない。農家さんからしてもね。)
この虫は、畑で芽を出したばかりの野菜や、大事に育てて植えたばかりの苗を食べてしまいます。食べるならその株を全部食べておなか一杯になってくれればいいのに、地際の茎の部分をかじってその株をぱたんと倒し、美味しいところをちょっと食べては次の株に移っていくのです。ちょっとぐらいいいだろうと見逃してやると、次々に倒していくのです。他の部分を食べてくれればいいのに、地際で倒してしまうものですから作物はもう成長できないのです。育てている者を、何ともやるせない気持ちにさせる、意地悪というか、空気を読めないというか、そんな虫なのです。
この虫から作物を守るにはどうする?
まあ、薬剤をまけば簡単ですし、楽ですね。私が農場にいたとき、そこでは農薬に頼らないやり方をしており、定期的に畑を見回っては虫を見つけ、やっつけておりました。いわゆる「虫見」というやつです。今、二十数年ぶりに虫見をしています。虫見は、1回やれば済む話ではなく、何度も、注意深く観察していかないといけません。手がかかります。薬剤を使うやり方もそれはそれ。農薬を使わないやり方もそれはそれ。どちらの選択もせず、やられるに任せるという農家さんもいるかもしれませんが、それもそれ。それぞれのやり方で育てられた食べ物。それらは、同じ価格で並べられるものではないと思っています。そこには明らかなコストの差があるかもしれない。単に、生産性で片付けられない「価値」がそれぞれにあります。その価値は、食べ手が何を「選ぶ」か、そこで変わってきます。
どんな選択をするのか。どんな野菜を作ってほしいのか。どんな作り方をしてほしいのか。食べ手が選択をするためには、その判断材料がなければ始まらない。これを提供するのは「売り手」の役割。私どもの仕事が何か、そのことにあらためて思いを致す「虫見」です。