7ヶ月間に亘って楽しませていただいた稲角農園さんの柑橘も、いよいよ終わり。今年もおいしい柑橘をありがとうございました。
最後に届いているものの中に、無農薬のレモンがあります。「レモンは無農薬喜ばれます。ありがとうございます。」との私の一言への稲角さんの回答が、ちょっと意外でした。「あと何年かでその木はだめになってしまいますが、、。」??
見た目さえ気にしなければ、無農薬に越したことないんじゃないの?
単純にそう思っていたのですが、完全に無農薬だと、虫や病気に、広い柑橘の農場に立つその木はやられてしまうそうです。そんなバカなと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、“農場”で、ある作物を、ある程度の収量を確保しつつ生産するとはそういう事なんだと改めて思う一件でした。
農場ではなく、山の中にある何本かのレモン、であれば話は違うかもしれませんが、農業はそもそも不自然です。長い年月をかけて人が作ってきた作物を、ある程度の集約化をして、必要な養分を施しながら、多くの人たちが賄える量を生産するのが農業だと思います。不自然な環境下で作物は育てられていきます。そこに人の手、技術、工夫が加わって、良く育った、おいしいものを手にすることができます。
例えば、無農薬のレモンを農家さんにもっと作って欲しければ(庭にある一本のレモンの話じゃなく)、自然に近い環境で、木がダメになるリスクも考慮に入れて、収量の少なさも考慮に入れて、農家さんの作業効率の悪さも考慮に入れて、そこまで甘くなかったり素朴な味かもしれないことも考慮に入れて、滅多に食べられなくなるかもしれないことも考慮に入れて、同じ値段では買えないかもしれないことも考慮に入れて、そこまで考えて“お付き合い”する必要があるのでしょう。そこまでじゃなくても、いくつかは。
たまに聞かれます。「無農薬ないの?」かつ、「もっと綺麗なものないの?」かつ、「高いわねぇ」大いに矛盾することを、そんなに考えもなしに言ってしまったりします。本当に無農薬を求めるなら、現場を知り、それを生産できる本当の“お付き合い”をしないと成り立たない。無農薬とか有機とか、未だ“ファッション”なのかなと思うことがあります。本当にそれを求めるなら、それに付随する不都合かもしれないことも受け入れないといけない。自分に都合の良いところだけ、いいとこ取り、は無理がある。
先日の、大分、伊藤農園さん訪問記。最後の方に載せた写真は、スピードスプレーヤー。薬剤などを、省力で、短時間で、出来るだけ少ない量で均一に散布する、果樹農家さんの強力な助っ人。多くの果物は、こんな機械にも支えられながら作られています。何を求めるか、そのためには何が必要か、、何を選択するか、、そもそも、それを考えて判断するための材料がなければ、始まらないですよね。生産者の皆さんもそうだと思いますが、販売する側の“仕事”に、あらためて考えを向かわせてくれた、檸檬です。今日の、店主雑感。